言語聴覚士の高齢者施設での仕事内容
高齢者施設
言語聴覚士が働く分野のひとつに、介護分野が挙げられます。ここでは介護分野の施設種類についての確認から、その仕事内容、代表的な1日のスケジュールやワークライフバランスまでを紹介します。
もくじ
介護分野の施設種類
介護分野といっても介護老人保健施設、デイサービス、特別養護老人ホームといった種類がありますが、それぞれの特徴を知っていますか?言語聴覚士の勤務先として代表的なものを挙げてみましょう。
介護老人保健施設
通称「老健(ろうけん)」と呼ばれます。介護老人保健施設は、リハビリテーション専門病院で在宅に向けて集中してリハビリテーションを行ったけれど、住宅改修が間に合わない、もう少し継続してリハビリテーションを受けたいなど家に帰ることが難しい方が入所を利用します。利用者の数に対してリハビリテーションスタッフの配置が義務付けされていますが、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の全ての職種が配置されているとは限りません。
通所デイケア(通所リハビリテーション)
家には帰れたものの、もう少しリハビリテーションを継続したいという方が利用します。よく間違われるのが、通所デイサービス(通所介護)です。デイサービスは日常生活の介助や家族の負担軽減が目的となり、レクレーションなどを通して生きがいをみつける場ともなっています。リハビリテーションを中心に行うデイケアの方が、リハビリテーションスタッフの配置が多くなります。
特別養護老人ホーム
「特養(とくよう)」と呼ばれることもあります。特養は、自宅での生活が困難な高齢者が利用できる入所施設です。要介護度3以上と、より介護の必要性が高い方が優先されます。公的なサービスを利用できるので、民間の有料老人ホームに比べると安い傾向になります。積極的に機能の回復を目指すというよりは、機能の維持を目的とすることが中心となります。利用者の数に対してリハビリテーションスタッフの配置が義務付けされていますが、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の全ての職種が配置されているとは限りません。
仕事内容
高齢者施設では、生活を穏やかに過ごすための機能の維持回復が、目標の中心となっていきます。急性期や回復期ほどではないにせよ、言語やコミュニケーション機能は、長期的にも回復していくと言われています。また、他の利用者さんとのかかわり、家族とのかかわりの中での回復や、新たなニーズ、目標が生まれることもあります。生活期に関わる言語聴覚士は、利用者さんそれぞれの生活について意識を向けていく必要があります。
高齢者施設は医療機関が母体となって運営していることもあるため、言語聴覚士は病院の業務と兼務している人もいれば、病院を含めて定期的に異動があるという職場もあります。利用者さんそれぞれのニーズに合わせて、言語・コミュニケーションについてのアプローチの他、摂食・嚥下機能について関わることも多いでしょう。ただし、介護保険の仕組みのもとでは受けられるリハビリテーションには制限があります。そのため、複数の領域のリハビリテーションが必要な方に対して、言語療法だけを毎日行うことが難しいこともあります。
口腔内の評価や口腔ケアなど、歯科衛生士や介護士、看護師など日常的なケアに関わるスタッフとの情報交換や共有は欠かせません。
1日のスケジュール
| 8:30 | 朝礼、利用者さんの情報共有 |
|---|---|
| 9:00 | 通所の方が来所されるため、受け入れも行いつつ手が空いている方からリハビリテーションを開始。 |
| 11:30 | 昼食や昼食の前後に摂食・嚥下機能へのアプローチが必要な方のところへ。 |
| 12:30 | お昼休憩 |
| 13:30 | 午後のリハビリテーション開始。通所の方を優先していく。 |
| 16:00 | 通所の方が帰宅。入所の方のリハビリテーションを引き続き行う。また担当の方のカンファレンスがあれば参加する。 |
| 17:00 | カルテ記入や清掃 |
| 17:30 | 終業 |
ワークライフバランス
言語聴覚士は夜勤がないことがほとんどです。入所利用者だけではなく、通所で通ってこられる利用者もおり、入浴などのスケジュールの合間にリハビリテーションを組み込んでいきます。カルテ記入などは、空き時間をうまく使って記載していくことが必要です。また、施設のスタッフの一人として、時に柔軟な対応を求められていることがあるようです。

