「成人の言語障害」に対しての治療・業務
「成人の言語障害」の
障害への治療・業務
現代は高齢化社会を迎え、成人分野での言語聴覚士が果たす役割も多様になっています。この記事では、成人の言語障害の方に対しての治療や業務について紹介します。
もくじ
「成人の言語障害」とは
成人の言語障害の代表的なものとしてまず挙げられるのが「失語症」でしょう。失語症は、何らかの原因で脳の言語中枢が損傷し、話す、聞く、読む、書くといった言語に関わる領域が障害される障害です。
言語野は右利きの人の多くは脳の左側に存在していますが、一箇所にすべての働きがまとまっているわけではありません。脳のあちこちに言語に関わる部位があり、また記憶や感情に関わる部位などと連携を取りながら機能しています。そのため、脳のどこをどの程度損傷しているのか、また年齢など様々な要因によって、失語症の重症度は異なります。日常生活にほとんど支障がない方から、失語症以外の障害も併存する人まで様々です。
次に挙げられるのが構音障害ではないでしょうか。構音障害は、いわゆる発音の障害で、顔面や舌、唇、といった部位の形や動きが障害されることによって生じます。
その他、話し始めの音を繰り返したり、詰まったりする吃音(きつおん)の方や、難聴の方も、コミュニケーションが難しくなることがあります。
また、声帯にポリープができたり、声帯が十分に動かなかったりすると、声がかすれるなど声質に変化が生じます。こういった声の障害を音声障害といい、言語障害のひとつです。
以上のように、成人でみられる言語障害といっても様々なものがあります。そして、これらは成人だけに限ったものではなく、お子さんにも起こりうる言語障害です。
「成人の言語障害」の原因
成人の言語障害は、脳出血や脳梗塞といった脳血管障害や、転倒や事故による頭部外傷などによって生じることが多いでしょう。そのほか、悪性腫瘍や進行性の疾患によるものもあります。特に失語症は誤解されやすいのですが、難聴や心理的な病気が原因ではありません。
また、成人の難聴は、突発性難聴や聴神経腫瘍など何らかの病気を発症して生じることがあります。吃音については、まだ不明なところも多いですが、生まれ持った性質と環境が絡み合って発症すると言われています。
「成人の言語障害」の治療
成人の言語障害の治療は、どのような原因が考えられ、どういった言語障害が生じているのか、また生活にどの程度支障が出ているのか、ということを把握することがスタートになります。医師などから情報を得たり、実際に患者さんと関わり必要な検査を行いながら分析をしていきます。その後、本人や家族の希望を確認しながら目標を設定し、必要なプログラムを実施していきます。
言語聴覚士の働き方は、勤務先によっても求められるものが異なってくるでしょう。たとえば、脳血管障害のように病院に運ばれて早い段階で関わるときには、言語聴覚士も命の危険性に対して注意しながらベッドサイドから患者さんに関わることが求められます。また、リハビリテーションを中心に行う病院では、患者さんの退院後の生活をイメージしながら治療プログラムを検討します。患者さんの状態に合わせて柔軟に見直していくことが必要です。
患者さんや家族の中には、病気になってしまったことを受け止めきれず、心理的に落ち込んでしまう方もいます。言語聴覚士は、型にはまった言語療法を行うだけではなく、患者さんに寄り添い、地道に関わっていくことが必要になります。

