「話すこと」の障害に対しての治療・業務
「話すこと」の
障害への治療・業務
言語聴覚士の対象は、さまざまな言語障害のある方々です。しかし、一般的に言語障害といって最初にイメージされるのは「話すこと」の障害なのかもしれません。この記事では「話すこと」の障害について触れていきましょう。
もくじ
「話すこと」の障害とは
「話すこと」の障害としてイメージするのは、まず「ろれつが回らない」ということでしょうか。脳出血や脳梗塞の発症の兆しとして、手足のしびれや麻痺と一緒によく紹介されます。専門的には構音障害(こうおんしょうがい)といい、脳や神経の障害によるもの、悪性腫瘍や奇形によって発音に必要な部位が欠けていることによるものなどに分けられます。
そして、言語聴覚士が接する機会が多い症状の一つが失語症です。失語症は、話すだけではなく、話を聞いて理解したり、文字を読んで理解すること、文字を書くことのいずれにおいても障害される言語障害です。失語症での話すことの障害には、話したいことばが浮かばなかったり、イメージしているものと違う言葉を言ってしまったりすることがあります。また、話している内容にまとまりがなかったり、相手のことばを理解していないために噛み合わないことを話したりすることもあります。
そのほかの話すことの障害としては、話し始めの音を繰り返したり、詰まってしまうといった吃音(きつおん)があります。また、声が出づらい、かすれてしまうといった音声障害もあるでしょう。
「話すこと」の障害の原因
失語症は、脳出血や脳梗塞といった脳血管障害や脳腫瘍、交通事故などで起こる頭部外傷など、脳の言語中枢が損傷されることで起こりえます。特に失語症は誤解をされやすいのですが、聴覚や心理的な病気が原因ではありません。また、構音障害も脳の病気や、筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)といった進行性の病気でも起こります。
音声障害については、ポリープや炎症といった声帯の形状のトラブルのほか、何らかの病気で声帯の動きが難しくなることが挙げられるでしょう。
吃音の原因については、まだ明確にはされていませんが、生まれつきの脳のもつ特徴と環境など多様な要因が複雑に絡まっていると考えられています。
「話すこと」の障害の治療
話すことの治療は、原因や症状、部位によって全く異なります。失語症のように「話すこと」だけに注目して治療をすすめられない症状もあります。いずれの状態も、まずは原因となる病気の情報収集を行い、実際にコミュニケーションをとったり、言語検査を行ったりしながら言語症状の把握を行います。そして、患者さんの生活や年齢、暮らし方などの要因も検討しながら目標をたて、回復プログラムを設定していきます。
また、中には話すことそのものの改善を目指すだけではなく、生活のしやすさに焦点を置きながら、症状の変化に合わせて柔軟に対応をしていく必要がある患者さんもいます。たとえば、進行性の疾患の方は、できるだけ機能を維持しつつコミュニケーショが取りやすい環境を整えることも必要です。他の職種とも協力して、コミュニケーションを代替するためのツールを検討することも役割のひとつです。

